「更年期症状のうつ」と「うつ病」の違いをチェック
公開日:2025年9月22日

「更年期に入り、気分が落ち込んだり涙もろくなったりすることが増えてきた…」そんな精神面の変化に戸惑う方は少なくありません。
ホルモンバランスの乱れが原因で起こる「更年期うつ」は、一般的なうつ病とは異なる特徴があります。例えば、日によって気分の波がある、身体の不調が同時に出るといった違いがみられます。
本記事では、更年期うつとうつ病の違いや見分け方や、対処法などをわかりやすく解説します。
更年期症状で「うつ」が起きる理由
更年期に入り、気分が落ち込んだりやる気が出なくなったりするのは、珍しいことではありません。こうした心の不調には、女性ホルモンの急激な変化が関係しています。
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分泌にも影響を与えます。そのため、ホルモンのバランスが崩れると、心のバランスも乱れやすくなるのです*1。
さらに、家庭や職場でのストレス、睡眠の質の低下、体の不調などが重なることで、うつのような症状が強く出ることもあります。
次の症状に心当たりのある方は、特に注意が必要です。
- 気分の落ち込みが長引いている
- 朝起きるのがつらく、仕事や家事に集中できない
- 食欲がない、もしくは食べ過ぎてしまう
- 趣味や人付き合いへの興味が薄れてきた
うつ状態を軽減・解消するには、早めの医療機関への相談が大切です。気分の落ち込みが更年期によるものか、うつ病など別の病気によるものかを見極めることが、適切なケアへの第一歩になります。
《更年期うつ》と《うつ病》の違い
更年期に入ると、ホルモンバランスの乱れによって気分が落ち込みやすくなるため、「もしかしてうつ病かも……」と不安に感じる方も少なくありません。しかし、更年期による一時的なうつ症状と、うつ病とでは原因や対処法が異なります。
更年期うつは、女性ホルモンの変化によって自律神経が乱れやすくなることが主な原因です*3。そのため、日によって気分に波があり、ホルモンバランスが整ってくると自然に改善するケースもあります。また、気分の落ち込みだけでなく、ほてりや動悸などの身体的な更年期症状もみられている場合は、更年期うつの可能性があります。
一方、うつ病はストレスの蓄積や環境の変化、性格など様々な要因によって、脳内の神経伝達物質の機能が低下することで起きる病気と考えられています*2。
いずれの場合も無理をせず、早めの相談と適切なケアが大切です。自己判断で放置せず、まずは医療機関を受診してみましょう。身体的な更年期症状がある場合は婦人科、気持ちの落ち込みが主な場合は精神科や心療内科がスムーズに相談しやすいですが、迷う場合はどちらを受診しても大丈夫です。
更年期症状のうつは治る?
【治療法&セルフケア】
更年期にみられるうつのような症状は、適切なケアによって軽減・解消が期待できます。ホルモンの変化による一時的な不調であることが多いですが、放っておくと慢性化するケースもあるため、我慢せず早めの対処が大切です。
症状の重さや体質に合わせた、さまざまな治療とケアの方法があります。
以下が、更年期うつに対する代表的な対処法です。
- ホルモン補充療法(HRT):
女性ホルモンの不足を補い、心身の不調をやわらげる治療法*1 - 漢方薬:
加味逍遥散(かみしょうようさん)*4や柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)*5などで、気分の波やイライラの改善を図る - カウンセリング:
専門家と話すことで気持ちを整理し、思考のクセに気づける - 認知行動療法:
ものの見方や行動パターンを少しずつ変えていくことで、気分の改善を目指す心理療法 - 生活習慣の見直し:
十分な睡眠とバランスのとれた食事、軽い運動など
つらい気持ちを一人で抱え込まず、早めの医療機関への相談が大切です。心と体の声に耳を傾けながら、自分に合った方法で少しずつ心身のバランスを整えていきましょう。

執筆者
立岩 奈緒
看護師・医療コラムライター
看護師として、9年間病院で勤務。
血液内科・神経内科・整形外科・婦人科外科・泌尿器科を経験。
現在は3児の母として家事・育児に奮闘しながら、Webライターとして医療・健康に関するコラムの執筆をしています。
読者の皆さまが抱える悩みや不安に寄り添い、少しでもお役に立てる情報をお届けできれば幸いです。
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