大切な家族を迷わせないために。元気な今こそ考えたい「遺言」の備え

公開日:2026年3月30日

本記事は掲載時点の制度に基づいています。

「遺言」は、ご自身が元気なうちに、ご自身の財産を誰にどのように残すかを決めておく最終的な意思表示です。法律で定められた割合(法定相続分)よりも本人の意思が優先されるため、遺産をめぐる家族間の無用なトラブルを未然に防ぐ「最大の思いやり」としての役割を持っています。

「遺言」について、知っておくべき重要ポイントを以下に詳しく解説します。

1.「遺言」でできること

「遺言」を作成すると、単に財産を分けるだけでなく、さまざまな指定が可能になります。

  • 財産の分割方法の指定
    「A土地とB建物は妻に、C預金は長男に」など、具体的に配分を指定できます。
  • 遺贈(いぞう)
    長男の嫁や内縁の妻など、法定相続人ではない人や、お寺や社会福祉団体などに財産を与えることができます。
  • 「負担付遺贈」
    「障害を持つ子の面倒を最期まで見ること」を条件に、第三者や機関に財産を譲ることも可能です。
  • その他の指定
    未認知の子の認知、各種手続きを実行する「遺言執行者」の指定、お墓や仏壇などを引き継ぐ「祭祀継承者」の指定もできます。

2.「遺言」の主な種類

「遺言」には厳格なルールがあり、それに従わないと無効になってしまいます(口約束やビデオメッセージは法的な効力を持ちません)。主に以下の3つの方式があります。

「自筆証書遺言」

全文、日付、氏名をすべて自分で手書きし、押印して作成する「遺言」です。「全文手書き」が原則ですが、財産目録については例外があります(2019年施行の法改正)。費用がかからず手軽ですが、法律的な不備で無効になったり、死後に発見した人が家庭裁判所で「検認」手続きを行わなければならないという手間やリスクがあります(※法務局の保管制度を利用した場合は検認が不要です)。

「公正証書遺言」

公証役場で、公証人(法律の専門家)に作成してもらう「遺言」です。形式の不備で無効になる心配がなく、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんのリスクがありません。数ある遺言方式の中で、最も安全で確実な方法と言われています。

最大のメリットは、被相続人については「死亡を確認できる戸籍1通のみ」で済むことです。家庭裁判所での「検認」という手続きも不要となり、すぐに遺産分割の手続きを進められます。病気等で字が書けなくても作成でき、病院等への出張も可能です。特に、「きょうだい相続」(被相続人に子どもや両親がおらず、配偶者もいない場合に発生する第3順位の相続のこと)などで必要戸籍が膨大になる場合は、公正証書遺言の作成にかかる費用よりも、戸籍収集の手間と費用の方が大きくなることもあります。

【「公正証書遺言」の作成にかかる費用(公証人手数料)】
法律(手数料令)によって定められており、「遺言で譲る財産の金額」に応じて計算されます。一般的な家庭なら、数万円から10万円前後が目安です。具体的な計算方法や、追加でかかる費用は以下の通りです。

  • 基本手数料(受け取る人ごとに計算)
    財産を受け取る(相続または遺贈される)人ごとに財産の価額を算出し、それぞれの手数料を出してから合算して遺言書全体の手数料を算出します。
  • 「遺言加算」
    「遺言」の対象となる全体の財産が1億円未満の場合、上記で算出した手数料に1万3,000円が加算されます。
  • 用紙代
    作成に必要な用紙代として、原本が4枚以上になる場合(3枚を超える分)は、1枚につき300円がかかります。
  • 証人(2名)の費用
    「公正証書遺言」の作成には、証人2人の立ち会いが必要になります。公証役場に証人の手配をお願いする場合、(公証役場によって異なりますが)一人につきおよそ10,000円程度の費用がかかります。ご自身で証人を用意することも可能ですが、その場合「未成年者」「推定される相続人、受遺者(財産をもらう人)、これらの配偶者および直径血族(祖父母、両親、子、孫など)は証人になることができません。
  • 出張費用(公証役場に行けない場合)
    病院や自宅などで作成するために公証人に出張してもらう場合は、基本の手数料が50%加算されるほか、公証人の日当と交通費が別途かかります。

「秘密証書遺言」

内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう方法です(家庭裁判所での検認が必要です)。

3. 特に「遺言」を作成すべきケース

すべての人に「遺言」は有効ですが、特に以下に当てはまる方は、「遺言」がないとトラブルになる可能性が高いため強く推奨されます。

  • 夫婦間に子どもがなく、全財産を配偶者に残したい場合
    (「遺言」がないと、亡くなった方の兄弟姉妹にも相続権が発生します)。
  • 内縁の妻や長男の嫁など、法定相続人以外に財産を分けたい場合。
  • 再婚しており、先妻の子と後妻がいる場合(遺産争いに発展するおそれが高い)。
  • 事業用財産などがあり、特定の相続人に事業をそのまま継がせたい場合。
  • 相続人がまったくいない場合。

4.「遺言」を作成する際の注意点

  • 「遺留分(いりゅうぶん)」に注意する
    配偶者、子、親には、「遺言」によっても奪うことができない「最低限の財産をもらえる権利(遺留分)」が法律で保障されています。これを無視して「特定の子どもにだけ全財産を譲る」などの極端な「遺言」をしてしまうと、後に残された家族から「遺留分侵害額請求」を起こされ、トラブルになるため配慮が必要です。
  • 「予備的遺言」を入れておく
    「財産を妻に相続させる」と書いても、もし妻が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合、その部分は無効になってしまいます。そのため、「もし妻が先に死亡したときは、長男に相続させる」といった予備の記載をしておくと安心です。
  • いつでも何度でも書き直せる
    「遺言」は一度書いたら終わりではなく、心境や家族関係の変化に合わせて、いつでも何度でも訂正や取り消し(撤回)が可能です。

「遺言」は、認知症などで判断能力がなくなってからでは作成することができません。「縁起でもない」「死期が近づいてから」と後回しにせず、ご自身が元気なうちに、大切な家族を守るための備えとして準備しておくことをおすすめします。

本記事は掲載日時点の法令・制度に基づいて作成しています。法改正等により内容が変更されている場合があります。正確な情報や具体的な手続きについては、最新の法令をご確認いただくか、専門家へご相談ください。