家族信託セミナー「親が認知症になる前に知っておきたい!家族信託の使い方」が開催されました【セミナーレポート】

公開日: 2026年8月10日

スクリーンに資料を映しながら話すセミナー講師と話を聞く老若男女

当日の家族信託セミナー会場の様子

2026年6月27日に「J:COM 相続そうだん」主催の「親が認知症になる前に知っておきたい!家族信託の使い方」セミナーが、大阪で開催されました。
人生100年時代となり、誰もが認知症になるリスクを抱える今こそ知っておきたい「家族信託」の基礎を学べる初心者向けの内容です。

「家族信託とは何だろう。どのような制度なのかわからない」「どうなったら家族信託を検討すべき?」「成年後見制度との違いを知りたい」と感じている方も多いでしょう。「家族信託」という言葉は知っていても制度の具体像がわからない方や、いきなり専門家に相談することには不安を抱く方におすすめです。
当日の会場の様子や内容をレポートしますので、ぜひ参考にしてみてください。

セミナー概要

家族信託の制度内容やその必要性についてのセミナーが実施されました。
参加者は午前の部、午後の部ともさまざまな年代の方がいらっしゃいました。ご夫婦参加やお1人で参加をされる方も見受けられました。

当日の主なトピックは次の通りです。
・認知症による資産凍結の問題
・成年後見制度とは
・家族信託とは
・家族信託の活用事例
・料金体系/費用シミュレーション
・質疑応答

ここからは、実際のセミナーの流れと内容をご紹介します。

認知症になってしまった人の資産は
凍結される!?

まず「家族信託がなぜ必要なのか?」を理解するためには、時代背景を知ることが大切です。

人生100年時代といわれる現代では、高齢化が進み、認知症になる人の数も増えています。セミナーでは「2025年の認知症の人は約730万人(高齢者の約20%)」(出典:厚生労働省ホームページ(「認知症の人の将来推計について」より))との推計が紹介されました。高齢者人口の増加に伴い、認知症に関する課題は今後さらに大きくなると予想されています。
認知症と、家族信託が注目される理由は、認知症が進むと資産が凍結される可能性があるためです。

認知症により判断能力が低下すると、本人の財産を安全に守るために各種の法律行為が制限されることがあります。その結果、預金の引き出しや定期預金の解約、不動産の売却・管理、有価証券の売却・運用などができなくなるケースも。これが、いわゆる「資産凍結・口座凍結」と呼ばれる状況です。

資産が凍結されると、親の入院費・介護費・生活費などを親の資産から支払えず、家族が費用を立て替える必要が出てきます。状況によっては大きな負担になるでしょう。

親が「もしものときのために」「子どもに迷惑をかけないために」と預貯金や不動産で老後資金を準備していても、いざというときに思うように使えなければ十分に役立ちません。
だからこそ、家族信託で認知症対策として資産凍結を防ぐことが重要です。

「家族信託」とは?
成年後見制度とはどう違う?

セミナーでは、認知症になった人の財産を管理する方法として、「成年後見制度」と「家族信託」の2つの制度が紹介されました。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて、スライドを使った説明が行われました。専門用語はわかりやすい言葉に置き換えられ、理解しやすいように工夫されていた印象です。

家族信託 成年後見制度(法定後見制度)
目的 認知症に備えて、信頼できる家族に財産管理を託す事前対策 判断能力が低下した人の財産と利益の保護
利用可能なタイミング 判断能力が低下する前(契約締結時) 判断能力が低下した後
財産を管理する人 信頼できる家族(受託者) 家庭裁判所が選任した後見人(弁護士・司法書士等)
運用の柔軟性 親(委託者)の意思を契約書に反映でき、柔軟な運用が可能 裁判所の監督が入るため、家族や本人の意向を反映した柔軟な運用が難しい
注意点 ・家族の状況に応じた設計が必要不可欠
・契約内容・管理財産に応じて初期費用がかかる
本人が亡くなるまで、毎月管理財産の総額に応じた費用がかかる

セミナーでは、家族信託の具体的な活用例や実際に契約する際の費用の目安が紹介されました。家族信託は、成年後見制度と比べて柔軟に財産管理ができますが、資産状況や家庭の事情を考慮した管理方法の設計が重要です。また、扱う資産の種類や契約内容に応じた費用もかかります。

こうした点を踏まえ、家族信託を検討する際には信頼できる専門家に相談し、本人や家族にとって最適な活用方法を確認することが望ましいと紹介されていました。

家族信託に関する疑問・参加者からの質問

セミナーの最後に、質疑応答の機会がありました。参加者の方々から寄せられた質問を一部抜粋してご紹介します。

Q1.家族信託を契約した後、
自分(親)で信託した不動産を売却できるのか。

A1.家族信託で不動産を信託財産とした場合、売却などの法律行為は受託者(子)が行います。信託登記をしている場合は、受託者が登記簿上の「所有者」として記載されるため、委託者(親)が単独で売却手続きを行うことはできません。ただし、受託者に指示を出したり、家族で話し合って売却方針を決めたりすることは可能です。

Q2.任意後見制度との違いは?
子どもを後見人にすればよいのでは?

A2.家族信託と任意後見制度は、財産管理の範囲や開始のタイミングが異なります。任意後見制度は、判断能力があるうちに契約を結び、判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。子どもが後見人になることは可能ですが、成年後見同様本人の利益を守ることを目的としている点や監督人の選任後は報酬が毎月発生する点が大きな違いです。

Q3.家族信託をするのにどのくらいの期間がかかるか。

A3.家族信託の契約にかかる期間は、ケースによっても異なります。信託内容の設計や家族間の話し合い、公証役場での公正証書作成準備などが必要となるため、全体として2カ月程度かかることが多いとされています。公証役場の予約状況や、信託内容の調整に時間を要する場合は、さらに期間が延びることもあるでしょう。

Q4.判断能力の有無の程度は?審査があるのか?

A4.家族信託の契約にあたり、明確な判断能力の基準があるわけではありません。信託契約を公正証書で作成する場合、公証役場では、委託者(親)が契約内容を理解しているかどうかを確認します。例えば「何の契約を結ぼうとしているか」「氏名などの個人情報を自分で答えられるか」などを確認し、意思能力の有無を判断することが一般的です。

その他にも、ここでは紹介しきれないほど多くの質問が寄せられました。ご自身のケースに当てはめながら質問する方もいて、他の参加者にとっても参考になる場面が多く見られました。

早めの相談で家族信託をより効果的に

今回は、「J:COM 相続そうだん」主催「親が認知症になる前に知っておきたい!家族信託の使い方」セミナーの様子をお届けしました。本セミナーでは、家族信託が今必要とされている背景や、成年後見制度との違い、具体的な活用例について学ぶことができました。

印象的だったのは、家族信託は「家族で話し合い、家族で決める仕組み」として、生前の財産管理から相続対策まで一連の流れを支えられる点です。従来の主な相続対策である遺言書は、1人で作成し、その効力が発揮されるのは本人が亡くなった後です。一方で、家族信託は家族で方向性を共有しながら設計でき、親自身の生活や財産管理にも生かせます。

ただし、柔軟性が高いからこそ、家族だけで話し合うと意見がまとまらないこともあります。早めに専門家へ相談し、家族全体の課題をプロの視点で整理してもらうことで、より効果的に活用できると感じました。

セミナー講師を務められたのは、株式会社こころのカンパニーで家族信託コンサルタントとして数百件の家族信託や相続、不動産関連の相談に携わってきた林 英和(はやし ひでかず)氏です。林氏は、「まずは備えとして家族信託を知ってほしい」と熱く語られていました。

参加者の前で家族信託について語るセミナー講師

家族信託セミナーの講師を務めた林 英和(はやしひでかず)氏

実際に、不動産売却の相談をされたものの、親御さんと面談した結果、判断能力がなく売却できなかったケースがあったそうです。「もっと早く相談してもらえていれば」という悔しさが、林氏の言葉から伝わってきました。こうした場面に直面してきた講師だからこそ、「家族信託」という選択肢を早めに知ることや、家族だけで悩まずに専門家に相談することの大切さを実感させられました。

とはいえ、いきなり専門家に個別相談を申し込むのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。そうしたときこそ、初めの一歩としてセミナーに参加してみてはいかがでしょうか。

「親が認知症になる前に知っておきたい!
家族信託の使い方」実施概要

開催日時:2026年6月27日(土)AM PM 二部開催
講師:林 英和(はやし ひでかず)
株式会社こころのカンパニー
アセット事業部兼アライアンス事業部
大阪支店 部長代理
家族信託コンサルタント・宅地建物取引士

相続に関するセミナーを順次開催!

「J:COM 相続そうだん」では、他にも相続に関するさまざまなセミナーを順次開催しています。

本記事は掲載日時点の法令・制度に基づいて作成しています。法改正等により内容が変更されている場合があります。正確な情報や具体的な手続きについては、最新の法令をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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