相続の発生前と発生後にすることは?今のうちに知っておきたい相続の流れと相談先をわかりやすく解説
公開日: 2026年8月13日
相続発生前と発生後の相談内容
遺産相続の流れや手続きについて不安を抱えながらも、「まだ起きていない相続について、何を相談すればよいのか」と相談をためらう方も多いのではないでしょうか。
相続では、発生前と発生後で必要な判断や行うべき手続きが大きく変わります。この記事では、それぞれの場面で相談できること、相談先の選び方、準備しておきたいものをわかりやすく解説します。
相続発生前と発生後では相談内容が変わる
相続とは、お亡くなりになった方の財産上の権利と義務を、相続人が引き継ぐことです。相続が発生する前と発生した後では状況が大きく変わるため、それぞれの場面で相談したいことも異なります。発生前は将来への備え、発生後は相続における判断や手続きの相談が中心となります。
【相続の流れと相談内容】
| 相続発生前 | 相続発生後 |
|---|---|
|
遺言書の検討 財産・負債の整理(相続時精算課税制度の検討) 相続税の概算把握 保険を活用した備えの検討 不動産の承継方法の検討 認知症に備えた財産管理の検討 生前整理や不用品処分 ご家族との情報共有 |
死亡届などの手続き 遺言書の確認 相続人・財産の調査 遺産分割協議 相続税の申告と納税 (相続登記) 遺品整理 |
相続発生前は「備えるための相談」が中心
相続発生前は、ご本人やご家族が将来に備える段階です。遺族の生活に関する不安を洗い出し、誰に財産を残すか、負債の扱い、相続税の負担などを確認します。相談することで備えを必要とする点が明確になり、具体的な対策方法の検討へと進めます。
相続発生後は「手続きと判断の相談」が中心
相続発生後は、お亡くなりになった方(被相続人)のご家族が、各種手続きに向き合う段階です。死亡届や生活に関わる事務手続きに続き、相続人や財産の確認、遺産分割、相続税の申告などを進める必要があります。早めに相談することで、負担が重くなる前に状況を把握しやすくなります。
まずは「何に困っているか」を整理する
相続について考え始めると、立場によってさまざまな不安が生じます。まずは、自分が何に困っているのかを整理しましょう。
相続される側では「実家にはもう住まないかも」「誰が相続人になるのだろう」、相続する側では「遺言書は必要なのか」「認知症になってしまったらどうなるのか」などが考えられます。悩みの種をそのまま書き出してみると、相談内容が見えてきます。
相続発生前に相談しておきたいこと
相続は、いつ発生するかわかりません。発生後は、ご家族がお亡くなりになったことに伴う各種手続きと相続の判断が続きます。分割しにくい遺産がある場合や家族構成が複雑な場合は、判断が難しく手続きが滞りがちです。前もって家族関係と財産・負債の内容を整理しておくと、相続に直面した際に全体像がつかみやすく、ご家族の負担を軽減できます。
誰に財産を残せるのか
財産を受け継ぐ権利を持つ人を相続人といい、法律で定められているため「法定相続人」とも呼ばれます。相続人は戸籍上の家族関係で決まるため、法律上の配偶者ではない内縁のパートナーは対象になりません。再婚相手の連れ子は、養子縁組をして初めて相続人となります。
一方で、離婚した元配偶者との子どもには相続権があり、親権の有無や生活状況は問われません。前婚の子、現在の配偶者との子、認知された婚外子はいずれも同じ順位で財産を受け取る権利があります。
家族構成が複雑な場合は、誰が相続人になるのかを前もって確認しておくと、遺言書の検討や財産の扱いを考える際に生かせます。
相続発生前に遺言書や財産を整理するポイント
遺言書を作成した方がよいか
遺言書は、お亡くなりになった方の意思を相続に反映させる書面で、財産の承継方法を指定できます。不動産のように分けにくい財産がある場合や、相続人が多く話し合いがまとまりにくい場面で役立ちます。法定相続人以外にも財産を遺贈できるため、相続権のない相手へ財産を残したいケースには欠かせません。
独身者がお亡くなりになると、親、兄弟姉妹の順で相続人となり、該当者がいないと財産が国庫に帰属します。遺言書を作成しておけば、血縁のない友人やパートナー、企業・団体など、望む相手に財産を残せます。
よく利用される遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。自筆証書遺言は自分で作成できる一方、形式の不備で無効になるおそれがあります。2020年に始まった自筆証書遺言保管制度を利用すれば、法務局で保管されるため、紛失や未発見リスクを抑えられます。
公正証書遺言は、公証人が作成に関わり、公証役場に保管される方式です。形式不備や紛失の心配は少ない一方、事前準備や内容に応じた費用がかかります。遺言書の作成を検討する際は、方式や保存方法も併せて相談するとよいでしょう。
財産や負債をどう整理しておくか
被相続人が生前所有していた経済的な価値のあるものは、すべて相続財産です。現金や預貯金、不動産、有価証券などの「プラスの財産」だけでなく、住宅ローンや未払い金、保証債務などの負債も「マイナスの財産」として相続の対象に含まれます。
「どこに何があるのか」を整理し、メモや目録を残しておくと、相続手続きを円滑に進められます。併せて、相続税の概算や相続時精算課税制度、保険の活用、不動産の承継方法、認知症に備えた家族信託、生前整理・不用品処分も検討しましょう。関連書類の保管場所をご家族と共有しておくことも不可欠です。
相続税がかかる可能性はあるか
相続税は、財産の総額から借入金や未払い金、葬祭費用などを差し引き、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に課税されます。
財産の評価基準は、購入時ではなく相続発生時の時価です。預貯金は残高、有価証券は終値など、財産の種類ごとに評価方法が異なります。特に土地や家屋は評価が複雑で、環境変化にも左右されるなど判断が難しい財産です。
実際の価額は相続発生まで確定しません。概算を把握しておくと、納税準備や節税対策を検討しやすくなります。評価が難しい財産がある場合は、相続に詳しい税理士へ相談すると安心です。
出典)
・国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
・国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
・e-Gov法令検索「相続税法
第22条」
不動産や空き家をどうするか
土地や建物は、誰が相続し、その後どう活用するかまで決めておきましょう。相続した不動産の名義をお亡くなりになった方のままにしておくことは違法なため、相続後は定められた期限内の相続登記が欠かせません。
また、相続後に誰も住まない空き家を放置すると、倒壊や衛生上の問題から「特定空家等」に該当するおそれがあります。そうなると、固定資産税の軽減措置が受けられず、税負担が増える可能性があります。こちらの記事も、参考にしてください。 ・相続した実家の「相続登記」をそのまま放置したらどうなるの!?
不動産は分け方や評価方法によって、相続人の負担が変わる点にも注意が必要です。必要に応じて不動産会社や司法書士、税理士に相談し、複数パターンを検討しておくと最善の方法に近づけます。
出典)
・e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条の「特定空家等」の定義および第13条・第22条の措置に関する規定」
・総務省「固定資産税」
ご家族に何を伝えておくか
被相続人の意思を伝えることは大切ですが、相続後のご家族の意向にも配慮しましょう。残される配偶者や子がどうしたいのか、日頃から話し合う機会を持てると理想的です。話し合いが難しい場合は、エンディングノートや手紙に伝えたいことを記し、ご家族が見つけやすい場所に保管しておく方法もあります。
一方で、遺言書や関係書類の保管場所、解約や名義変更が必要な契約一覧、オンラインサービスのアカウント情報、お亡くなりになったことを伝えてほしい連絡先などは、文書で残しておきましょう。ご家族が必要な情報を迷わず確認できる形に整えておくことが重要です。
相続発生後の流れと相談したいこと
被相続人がお亡くなりになると相続が開始し、生活に関する手続きや相続人の確定、財産と負債の調査、遺産分割、相続税の申告などが続きます。期限のある手続きを軸に進め、判断に迷う場合は専門家への相談も活用しましょう。
相続手続きは何から始めるか
相続の手続きには、お亡くなりになったことが戸籍に記載される必要があるため、まずは死亡届を提出します。国内でお亡くなりになった場合は7日以内が期限とされており、すぐに戸籍に反映されます。しかし、国外でお亡くなりになった場合は提出期限が3カ月以内となり、戸籍への反映まで1~2カ月かかるケースもある点に注意しましょう。
続けて、年金・健康保険・介護保険の停止や生命保険の請求、公共料金や家賃・管理費の名義変更など、期限や支払いが関係する手続きを確認し、順番に進めていくことが大切です。
並行して、相続に必要な準備にも着手します。遺言書の有無、相続人の範囲、財産と負債など、相続に必要な情報を集めましょう。
相続人や相続財産をどう調べるか
相続人は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集して確認します。離婚や養子、認知された子など、ご家族が把握していなかった相続人が判明することもあります。
相続財産は、通帳や金融機関からの郵便物、固定資産税の納税通知書、保険証券、証券会社の報告書、借入金の契約書、カード明細などを手がかりに調べましょう。書類が見つからない場合や調査が難しい場合は、相談窓口を利用し、サポートしてくれるコンサルファームを紹介してもらう方法もあります。
相続放棄や限定承認を検討した方がよいか
財産より負債が多い場合や負債の内容が把握できない場合は、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。相続放棄は財産と負債の一切を引き継がない方法で、限定承認は取得した財産の範囲で負債を負担する方法です。
これらの手続きは、相続の開始を知った日から原則3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てます。限定承認は相続人全員の共同申述が必要です。判断材料がそろわない場合は期間の伸長を申し立てることもできるため、早めに家庭裁判所や弁護士へ相談しておくと考えをまとめやすくなります。
遺産分割協議をどう進めるか
遺言書に財産の分け方が記載されている場合は、その内容に沿って進めます。遺言書がないケースや指定されていない財産がある場合は、相続人全員で行う遺産分割協議が必要です。
遺産の多くを不動産が占める場合は、取得者が代償金を支払うのか、売却して分けるのかなど具体的な方法を協議します。合意した内容は遺産分割協議書に整理し、次の手続きに備えます。協議がまとまらない場合は、弁護士や家庭裁判所への相談も視野に入れておきましょう。
相続税申告や相続登記について相談する
相続税の申告と納税は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内が期限です。財産評価や申告書の作成は専門知識が求められるため、早めに税理士へ相談しておくと安心です。
不動産を相続した場合は、相続による取得から3年以内に相続登記を申請します。相続登記は2024年4月から義務化され、正当な理由なく期限内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。施行前の相続でも、未登記の不動産は義務の対象となるため、司法書士や法務局に相談して手順を確認しておきましょう。
こちらの記事も、参考にしてください。
・遺言がない場合はどうなる?「遺産分割協議」の手順と知っておくべきリスク
遺品整理をどう進めるか
遺品整理に法律上の期限はありません。ただし、遺言書や相続手続きに必要な書類や財産が紛れていることがあるため、先に重要書類と相続財産を分別します。その後、遺産分割の見通しが立ってから、日用品や家具の整理に取り組むとよいでしょう。
形見分けに残す品と処分する品を分けますが、ご家族や親しい人の意向を確認しないまま処分すると、トラブルにつながりかねません。判断に迷う品は、一旦保留するほうが安全です。
自分たちでの整理が難しい場合は、遺品整理事業者への依頼も選択肢に入れます。サービス内容や作業範囲、実績を確認し、複数社の見積もりを比較して慎重に検討しましょう。
出典)国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル−料金や作業内容に関するトラブルが発生しています−」
相続の相談内容によって相談先が変わる
相続の相談内容に応じた相談先
相続には税金、登記、遺言書、家族間の話し合い、不動産、遺品整理など複数の問題があり、相談先も異なります。悩みが重なると、どこへ相談すべきか迷うことも珍しくありません。
税理士・弁護士・司法書士・公証人などの専門家
相続では、専門家の知識に頼りたい場面もあります。相続税の申告や財産評価は税理士、相続登記は司法書士、相続人同士の争いや遺産分割協議の代理は弁護士が主な相談先です。
公正証書遺言の作成では、一人の相続人にすべて承継させるといったシンプルな内容であれば直接公証役場へ持ち込んでも支障はないでしょう。しかし、複数の相続人がいるケースや分割が難しい遺産があるケースなど複雑な場合は、専門分野の士業者に原案を練ってもらうと安心です。
相続の内容によっては複数の専門家が関わることもあります。専門分野が分かれていることで、同じ状況説明を何度も繰り返す負担が生じる点は課題の一つです。
自分だけで決めるのは難しい
相続発生後は、悲しみや疲労の中でさまざまな判断を求められます。相続人・財産・負債・遺言書は互いに関係するため、一部だけで判断すると後の手続きに影響します。全体像を整理して進めることが大切ですが、そのためには相続の流れに対する知識や情報が欠かせません。自分だけでは難しいと感じたときは、相続に詳しい専門家や相談窓口を利用すると負担を抑えられます。
どこに相談すればよいかわからない場合は相談窓口を利用する
相続の相談先を選ぶのが難しい場合は、まず相続全体を整理できる相談窓口を利用する方法があります。こうした窓口は、状況や困りごとを整理した上で、必要な専門家や事業者を案内する点が特徴です。複数の問題が絡む複雑な相談でも、一人の担当者が対応してくれるため、同じ説明を繰り返す負担を減らせます。
「何から始めればよいかわからない」という漠然とした不安も、最初に総合的な視点で全体像を捉えると次のステップが見えやすくなります。
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相談前に準備しておくとよいもの
相談前には、「家族関係・財産や負債・困っていること」を、できる範囲でまとめておくと話が進めやすくなります。すべてを完璧にそろえる必要はありません。
- 家族関係:配偶者、子ども(前婚の子、婚外子、養子を含む)、親、兄弟姉妹などを簡単に書き出します。
- 財産・負債の概要と関連書類:財産と負債の有無を調査し、根拠資料として遺言書、通帳、固定資産税の通知書、保険証券、借入金契約書などをまとめます。
- 困っていること:「相続税が心配」「不動産をどうするか」「遺品整理の進め方」など、気にかかっている内容を箇条書きにします。
相続で迷うのは当たり前。
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相続は何度も経験するものではないため、迷うのは自然なことです。相続の発生前は遺言書や財産整理、発生後は相続手順や相続人・財産の相談をすると次にすべきことがわかりやすくなります。
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本記事は掲載日時点の法令・制度に基づいて作成しています。法改正等により内容が変更されている場合があります。正確な情報や具体的な手続きについては、最新の法令をご確認いただくか、専門家へご相談ください。
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