更年期症状の原因は《エストロゲン》の減少

「怒りっぽくなった」「顔が熱くて汗がふき出す」「とても疲れやすくなった」などで悩む事はありませんか?

もしかしたら、それは更年期の症状かもしれません。

閉経前後の約10年を更年期と呼び、更年期には心身に多彩な症状を起こします。症状が起きる原因は、卵巣の機能低下による女性ホルモン「エストロゲン」分泌の減少です。

本記事では、女性の更年期とエストロゲンの変化とその影響について解説します。

全身を守る女性ホルモン「エストロゲン」

女性の体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つのホルモンによってコントロールされています。

そのうち、エストロゲンは次のような働きがあります*1 *2

  • 子宮内膜を増殖させて妊娠に備える
  • 乳房を発育させ女性らしい体を作る
  • 肌のつややハリを保つ
  • 骨量を保持
  • 自律神経を安定化
  • 血管の健康を保ってコレステロールのバランスを整えて動脈硬化を予防
  • 脳の血流を増やし、活性化

エストロゲンは、妊娠に備えて体を整え、自律神経も安定させます。また、善玉コレステロールを増やしたり、血管の柔軟性を上げるので、50歳位までの女性の心血管系疾患の割合は男性と比べると低くなります*3。このように、エストロゲンは女性の全身を守っているのです。

更年期にはエストロゲンの数値が下がる?

それでは、更年期にはエストロゲンの数値はどうなるのでしょうか?

エストロゲンなど女性ホルモンは、脳からの指令によって卵巣から分泌されます。

  1. 脳の視床下部から「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」が分泌
  2. GnRHの刺激で脳下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体刺激ホルモン)が分泌
  3. FSHとLHの刺激で、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌
  4. 女性ホルモンの量に応じて脳の視床下部へフィードバック(少ないと視床下部を刺激)

エストロゲンの数値は40代後半から徐々に減り、閉経の半年ほど前からは、急激に減少します。

逆に、FSH・LHは閉経に向かって数値が上がります。卵巣機能の低下によって、閉経の約7~8年前からエストロゲン量を上げようと少しずつ上がります。

エストロゲンが減ると全身に症状が出る

女性の体を守っているエストロゲンが、更年期に減ってしまうと女性の体には影響が出てきます。

更年期には脳がどれだけ卵巣に指令を出しても、卵巣機能が低下しているためエストロゲンが出にくくなります。そうすると、さらにエストロゲンを分泌するようにとフィードバックが視床下部に送られて視床下部は刺激を受けます。

視床下部は、生きるために必要なホルモン分泌や免疫調節、自律神経の調節や日内リズム、感情などをコントロールしています*4 *5

視床下部が過度に刺激を受けた結果、自律神経の乱れや、ホルモンバランスの崩れなど心身に影響が出てしまうのです。これが「更年期症状」です。

更年期にあらわれる症状は個人差が大きく「不定愁訴」と呼ばれるほどさまざまなため、更年期症状と気付きにくいものもあります。更年期世代で体や心の不調に悩まれている方は産婦人科で相談してみましょう。

竹田 由子

執筆者

竹田 由子

薬剤師

大学院修了後に病院で10年、その後は夫の転勤に伴い調剤薬局・診療所や漢方のオンラインカスタマーサポートで勤務。20年以上患者様と向き合って未病・予防の重要性を感じる。自身PMSや妊活を経験して43,47歳で出産。「女性の生理と健康」に対する意識が高まり、2人目の出産後は女性の健康を支える養生サポートを行うほか、薬剤師ライターとして文章を通して幅広い女性の心身のサポートを目標に活動している。