実家じまいの悩みと対策 家財整理・名義変更のポイントや手続き上の注意点をご紹介

公開日: 2026年10月21日

家の模型と「家じまい」の文字ブロック

実家じまいの悩みと対策

親の住み替えや高齢化をきっかけに、実家じまいが必要になるケースは少なくありません。実家じまいを進めるなかでは、家財の整理、思い出の品の扱い、仏壇や神棚の処分、名義放置による相続登記の問題、空き家管理、住み替えの手続きなど、複数の課題が同時に発生します。この記事では、体験談をもとに実家じまいの基礎知識、進め方の要点を整理します。

Hさん(50代)母の住み替えをきっかけに、「実家じまい」を進めることに

奈良県 Hさん(54歳・会社員)
数年前に父が亡くなってから、母は広い家で一人暮らしを続けていました。しかし、生活の負担や安全面を考え、母は老人ホームへの住み替えを希望するようになりました。そこで、母と一緒に実家じまいを進めることになったのです。しかし、家財整理、名義放置による相続登記の問題、住み替えの手続きなど、複数の課題が重なり、想像以上の負担が生じました。

家財整理を始めたが、思い出の品などの判断が難しく
作業が進まない

実家じまいにあたり、まずは家の中の片付けからスタートしました。しかし、長く暮らしてきた実家には、多くの家財が残っています。母の生活用品だけでなく、私が子どもの頃に使っていた物や父が遺した品もあり、何から手をつけたらよいのか、開始早々迷ってしまいました。

その後も、アルバムや手紙などの思い出の品を捨てる決心がつかず手が止まったり、仏壇や神棚をどうしたらよいのかわからず戸惑ったりする場面もあったのです。結果として、時間だけが過ぎていきました。

実家の名義変更がされておらず、売却に進めない

母が老人ホームへ移り住むと、実家は空き家になってしまいます。実家をどうすべきか判断できなかった私は、ひとまず不動産業者に査定を依頼しました。

そこで、実家が亡くなった父の名義になっており、この状態のままでは売却も賃貸もできないことがわかりました。父が亡くなった時点では相続登記が義務化されておらず、相続登記の必要性に気づかなかったのです。

作業が長引き、費用負担もストレスも増えた

実家じまいでは、さまざまな費用もかかります。家具や家電の処分費用、遠方から実家へ通うための交通費、実家を所有している間の固定資産税、相続登記費用などが積み重なることで、かなり大きな出費となりました。

作業や手続きが長引くことで、維持・管理の負担が続いたこともストレスでした。大切な思い出の品などをある程度取り出したら、必ずしも綺麗に片付けなくても、家財ごと現況のまま買い取ってくれる業者もあります。しかし、わが家の場合は思い出の品などの仕分けに思ったよりも時間がかかってしまいました。

そのため、母が老人ホームへ移った後も、休日になれば空き家となった実家へ足を運んで、ひたすら作業を行う日々が続きました。母は私の負担を心配し、作業が大変になっていないか、いつも気にかけてくれていました。そんな母の思いにも応えたいと、長年暮らしてきた家を丁寧に整理しようと努めていたのです。しかし、作業はなかなか終わりが見えず、この状態がいつまで続くのかわからないことに、次第に途方に暮れてしまいました。

なぜ自力での実家じまいがうまくいかなかったのか

実家じまいでは、家財の量や思い出の品の判断、名義変更手続きを放置したことによる相続登記手続き、処分費用や移動・作業の負担など、複数の課題が同時に発生します。私の場合は、実家をどうするのかを決めないまま、とりあえず家財整理を始めてしまったために、「何を残し、どこまでを処分するのか」判断ができず、作業が停滞してしまいました。

また、実家の名義を確認していなかったことも、うまくいかなかった要因の一つです。相続登記がされていないと、売却や解体などに進めず手続きが長期化してしまうことを、身をもって知りました。

自力での実家じまいの失敗を通して、まずは「実家をどうするか」という方針と、必要な基礎知識を整理することが重要だと感じました。今振り返ると、もう少し早く事前準備しておけばよかったと思っています。実際に経験したからこそ、自分たちだけで抱え込まず、専門家の知識やサポートを得ることが、負担を軽減しながら計画的に進めるための大切なポイントだと実感しました。

参考リンク)

実家をどうするか決める
売却・賃貸・解体の選択肢

家のイラストと売るか貸すかの選択肢

実家じまいの選択肢

実家じまいでは、まず家を今後どうするのかを決めましょう。将来的に考えてもご家族やご親族が住まないことがわかっている場合の主な選択肢は「売却」・「賃貸」・「解体」です。

売却か賃貸かは、「どちらが正解か」ではなく、実家の状態・立地・家族の意向・維持費などを踏まえて選びます。
また、売却か賃貸かを検討した結果として、「解体」という方法が浮上するケースもあるでしょう。ただし、建物を解体する場合には慎重な判断が必要です。

実家じまいの判断は将来の相続にも影響するため、選択肢を比較する際には相続を意識して進めることが大切です。

実家を売却する選択肢 向いているケース・手順・注意点

まとまった資金が必要な場合や、家を手放して所有や管理の負担をなくしたい場合の選択肢となるのが売却です。老人ホームの入居費、介護費、生活費などの資金が必要な場合は、実家を売却した資金を充当することができます。遠方に住んでおり、実家の維持管理が負担になるケースでも、売却が向いていると言えるでしょう。

なお、売却を検討する際は、建物の扱いに注意が必要です。建物を壊して更地にした場合、年をまたいでしまうと住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がる可能性があるため、建物を残したまま売却したほうが有利になるケースもあります。

一方で、解体して即座に売却する場合では、更地(建築条件なし)にしたほうが、買い手がつきやすく、高値で早期売却できるケースもあります。売却を考える際には、どのパターンが自分にとってメリットが大きいかを慎重に検討しましょう。

また、手元資金に余裕がある場合は、生前の売却を急ぐ必要はありません。相続では、不動産を生前に売却して現金で保有するより、不動産のまま所有していたほうが、相続税評価額が低くなるケースがあります。

実家の売却を考える際には、将来的な相続にどう影響するかといった視点もあわせて、必要に応じて専門家に相談しながら検討することが大切です。

売却の手順

実家を売却すると決めた場合、家族で方針を確認したうえで、不動産会社への査定依頼や媒介契約、買主との契約へと進むのが一般的です。

  1. 家族で売却方針を決める
  2. 名義・相続登記を確認(不動産登記簿謄本を取得)
  3. 不動産会社に査定を依頼
  4. 売却条件を決めて媒介契約
  5. 買主を探す
  6. 売買契約・決済・引き渡し

売却の注意点(名義確認・空き家特例など)

まずは、実家の土地・建物の名義を確認します。親が所有していると思っていても、登記上の名義が異なるケースもあるため、不動産登記簿謄本などで登記上の所有者を確認しておきましょう。

また、相続時に利用できる税制上の特例があることも踏まえて、売却方針を決める段階で、売却のタイミングを考えることが大切です。代表的な特例は以下の通りです。

  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特例
    実家を相続した後で売却する場合、相続した空き家やその敷地を売却した際に、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最大3,000万円の特別控除が利用できる可能性があります。ただし、対象となる住宅の建築時期や相続後の利用状況、売却時期、売却方法など、厳格な要件が定められています。家屋を解体して敷地を売却する場合も、解体しただけで特例が適用されるわけではありません。空き家・敷地を売却すれば無条件で適用できるわけではないため、複数の適用要件の確認が必要です。
  • 小規模宅地等の特例
    親と同居していた子などが土地を相続する場合、要件を満たせば相続税の課税対象となる土地の評価額を大幅に減額できる可能性があります。なお、同居していない子でも「家なき子特例」によって適用できる場合がありますが、要件は複雑です。適用可否の判定には専門家(税理士等)への確認が不可欠です。

こうした将来的な相続税への影響も含めて処分方法を検討しましょう。

実家を賃貸に出す選択肢 向いているケース・手順・注意点

賃貸は家賃収入を得ながら、今後も実家を所有したい場合に検討したい選択肢です。加えて、住人がいることで家の劣化や放火などの防犯リスクを防ぐメリットもあります。

立地がよく賃貸需要が見込める、建物の状態が比較的良好で大規模な修繕が必要ない、将来的に家族が住む可能性があるといったケースでは、賃貸が向いている可能性があるでしょう。

賃貸の手順

実家を賃貸に出す場合は、まず周辺の賃貸需要や建物の状態を確認します。そのうえで必要な修繕を行い、賃料を設定して入居者を募集するのが基本的な流れです。

  1. 賃貸需要を調査
  2. 建物の状態を確認
  3. 必要な修繕・リフォーム
  4. 賃料を設定
  5. 入居者を募集
  6. 賃貸借契約
  7. 入居後の管理

賃貸の注意点(修繕費・管理負担など)

人口減少地域や駅から遠い場所などでは、借り手が見つかりにくい可能性があります。築年数が古く、大規模な修繕やリフォームが必要な場合も、家賃収入だけで費用を回収できるかを見極めなければなりません。

実家を賃貸に出せば家賃収入を得られる一方で、所有者として継続的に負担しなければならない費用や管理の手間が生じます。また、名義人が認知症等で修繕の発注や家賃の受取に支障をきたすこともあるでしょう。家族信託などを利用する可能性も含め、将来的な負担まで考えたうえで、賃貸に向いているか判断することが大切です。

  • 修繕費や管理の手間などが発生
    実家を貸し出すときには、よほど状態がよくない限りは、リフォームやリノベーション費用がかかります。築年数が古い住宅では大規模改修が必要になり、費用がかさむケースも少なくありません。また、賃貸では継続的な費用や管理の負担がかかるのが大きな注意点です。建物や設備が故障した場合など、状況に応じて所有者が修繕に対応する必要が生じます。
  • 賃貸借契約での注意点
    入居者と賃貸借契約を結ぶ際には、契約期間や賃料、更新、修繕の負担などの条件を十分に確認しましょう。特に原状回復については、入居者の故意・過失による損傷なのか、通常の使用による経年劣化なのかによって、費用負担の考え方が異なります。契約時に原状回復の範囲や費用負担について確認しておくことで、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。

以下のリンク先の記事では、賃貸マンションを相続した体験談をもとに、相続後に起こりやすい負担や手続きの流れ、相続に備えて生前に準備しておきたいポイントをご紹介しています。ぜひあわせてお読みください。

実家を解体する選択肢 向いているケースと手順・注意点

売却や賃貸を検討した結果、解体が選択肢として浮上することもあるでしょう。解体は、建物の老朽化が進んでいて倒壊リスクなど安全性に不安がある、土地として売却・活用する明確な計画がある場合は合理的な選択肢となります。

解体の流れ(見積〜更地管理まで)

不動産業者に相談するなどの慎重な検討の結果、解体する場合は、解体業者に依頼して工事をします。業者を探す前に、解体後の土地をどうするのかを決めておくことが大切です。

  1. 解体後の土地の使い道を決める
  2. 解体業者に見積もりを依頼
  3. 自治体の補助制度を確認・必要な手続きを行う
  4. 解体工事
  5. 土地を売却・賃貸・活用

解体の注意点(固定資産税・補助制度など)

解体を選択する場合は、建物を取り壊すことだけでなく、その後の土地の管理や税負担、売却・活用方法まで見据えて判断する必要があります。解体費用に加え、更地にすることで固定資産税が変わる可能性や、補助制度を利用できる場合の申請条件など、事前に確認しておきたい点は少なくありません。

後から想定外の負担や問題が生じないよう、解体を決める前に特に注意しておきたい点を以下にまとめました

  • 更地でも管理が必要
    更地にした後も、雑草の手入れや害虫・害獣対策、不法投棄への対策など管理が必要です。遠方に住んでいる場合など、定期的に現地を確認することが難しい場合は、管理を業者に依頼するなどの費用負担が生じることもあるでしょう。
  • 固定資産税が高くなる可能性がある
    住宅が建っている土地には、一定の要件を満たすことで「住宅用地の特例」が適用されています。しかし、実家を解体して更地にすると、この特例が適用されなくなり、土地にかかる固定資産税が高くなる可能性があります。
  • 空き家特例の適用に注意
    実家を解体して更地にしても、一定の要件を満たせば「空き家の3,000万円特別控除」を利用できる場合があります。ただし、相続から売却までの期間や、解体前後の土地の利用状況などに細かい条件があるため、適用要件を慎重に確認しておくことが大切です。
  • 再建築不可物件
    再建築不可物件とは、解体して更地にしてしまうと新たな家を建てられない土地のことです。再建築不可物件の場合、解体して更地にすると住宅が建てられない土地になり、活用方法が極端に減るため、安くしか売れなくなったり買い手がつかなくなったりするケースがあります。

これらの注意点を踏まえたうえで解体を選ぶ場合は、さらに以下の点もチェックしておきましょう。

  • 解体費用は業者によって差が大きい
    解体にはまとまった費用がかかるため、事前に資金を確保しておく必要があります。解体費用は、建物の構造や状態によって異なるため、同じ建物でも業者によって見積もり額に大きな差が出ることがあります。そのため1社だけで判断せず、複数の業者から見積もりを取り、費用だけでなく工事内容や追加費用の有無なども比較しましょう。
  • 自治体の解体費用補助制度を確認する
    自治体によっては、老朽化した空き家や一定の条件を満たす住宅の解体を対象として、解体費用の一部を補助する制度を設けている場合があります。ただし、対象となる建物や所有者、工事内容などに条件があるほか、解体工事に着手する前の申請が必要となる場合もあります。

判断できないまま空き家にすると起こるリスク

実家じまいでは、まず売却や賃貸といった方法を検討します。しかし、これらの選択肢を取ることが難しい場合には、誰も住まない状態が長引き、結果として空き家になってしまうことがあります。こうした空き家は、さまざまな問題につながる可能性があるため注意が必要です。

  • 空き家は維持コストがかかる
    空き家になっても建物や土地に対する管理は不可欠です。雑草・害虫などによる近隣への影響や不法侵入・不法投棄などのリスクを回避するためには、継続的な除草・巡回・修繕が求められます。

管理が行き届かず放置状態になると、建物の老朽化や雑草、不法投棄などによって、近隣住民に迷惑をかけるおそれが高まります。管理状態によっては「管理不全空家等」、さらに「特定空家等」に指定される可能性もあるでしょう。特定空家に指定されると、自治体から助言・指導や勧告などの措置を受けることがあるため、早めの対処が大切です。

さらに、売却や賃貸といった選択が遅れるほど、建物が劣化して売却・賃貸における価値が下がったり、修繕費用がかさんだりする点も見逃せません。

※管理不全空家等:放置すれば周囲に悪影響を及ぼす「特定空家等」になるおそれのある空き家のこと。
※特定空家等:放置することによって、倒壊など保安上の危険がある、衛生上有害となる、景観を損なっているなど、周辺の生活環境に著しい影響を及ぼしている空き家のこと。

家財整理は「実家をどうするか」を決めてから進める

売却・賃貸・解体で整理の範囲や進め方が変わるため、家財整理は、単純に不用品を処分するのではなく、「実家を最終的にどうするのか」を決めてから進めることが大切です。家財整理についての注意点を、以下にまとめました。

  • 売却なら内見引き渡しを見据えて整理する
  • 賃貸なら入居者募集に向けて整理修繕する
  • 解体なら解体前に家財を撤去する
  • 思い出の品、仏壇・神棚、重要書類などは相続に関係する可能性があるのですぐに処分しない
  • 遠方なら専門業者の利用も検討する

実家の家財整理は、相続財産の把握にもつながります。将来の相続も見据えて、処分する物と残しておくべき物を慎重に確認しておくとよいでしょう。

なお、J:COMによる「親の相続経験に関する実態調査」では、直近5年以内に親の相続を経験した人のうち、40.3%が「実家の片付け・不用品の処分」を「親の生前に行っておく必要があった」と回答しています。

実家じまいを考え始めた段階で、親本人の意向も確認しながら家財整理を進めておくことが重要です。

出典)https://newsreleases.jcom.co.jp/info/20260806_22040.html

相続登記の義務化と手続きの流れ

家の模型と相続登記と書かれた紙

相続登記の義務化

2024年の法改正により、相続登記は相続発生から3年以内の申請が義務化されました。相続登記の申請をしないと実家を売却・賃貸・解体することができません。ここでは、実家じまいにおいても重要なポイントである相続登記に必要な手続きを整理します。

相続登記とは

相続登記とは、土地や建物などの不動産の所有者がお亡くなりになったとき、登記簿上の名義を相続人へ変更する法的手続きのことです。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。

参考リンク)

2024年以前の相続も義務化の対象

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。この日以前に発生した相続で取得した不動産も、すべて相続登記の義務化の対象です。過去の相続については、制度開始から3年間の猶予期間が設けられており、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。

正当な理由なく期限内に相続登記を申請しない場合は、10万円以下の過料の対象となります。ただし、即座に過料が言い渡されるわけではなく、催告を経たうえで判断されます。また、相続手続きが進まない場合には、「代表相続人の登記」をすることでも、過料を免れることが可能です。

なお、相続登記の義務化について、行政から対象者に一律で連絡が届く仕組みはありません。そのため、各自が個別に相続登記が済んでいるかを確認し、必要な手続きを進めることが重要です。

相続登記に必要な書類と申請の流れ

相続登記における必要書類や申請の流れは下記の通りです。

【必要書類】
一般的に、遺産分割協議によって実家を相続する場合には、次のような書類を準備します。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本など
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書など
  • 登記申請書

このほか、相続の状況や不動産の内容によって追加の書類が必要になる場合があります。

【申請の流れ】
相続登記は、一般的に次のような流れで進めます。

  1. 必要な戸籍・書類を集める
  2. 誰が不動産を相続するのか決める(遺言書の確認・遺産分割協議書の作成)
  3. 登記申請書を作成する
  4. 法務局へ申請する
  5. 登記完了を確認する

相続登記は自分だけで進めることが難しい場合も多くあります。必要に応じて、司法書士などの専門家への相談を検討しましょう。

相続登記を放置した場合のリスク

相続登記は、正当な理由なく期限内に相続登記を申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、相続登記をしないまま時間が経過すると、相続人の数が増えて関係が複雑になる可能性にも注意が必要です。

例えば、相続登記せずに放置したまま年月が経過し、相続人のうちの一人が亡くなった場合、その配偶者や子どもが新たな相続人として加わることがあります。こうして相続人が世代をまたいで増えていくと、実家を売却・賃貸・解体したいと思ったときに、関係者全員の同意を得ることが難しくなるでしょう。結果として、実家を処分したいタイミングで手続きが進められなくなるおそれがあります。

参考記事)

実家じまいにかかる主な費用と税金

実家じまいでは、数十万円から数百万円単位が一般的だと言われています。実家をどうするかによって必要な費用が変わるため、事前に整理しておくことが重要です。

売却・賃貸・解体にかかる費用

売却・賃貸・解体のどの方法を選ぶかによって、必要となる費用は以下のように異なります。初期費用と継続的にかかる費用の両方を比較して、家族の状況に合った方法を選ぶことが大切です。

  • 売却:仲介手数料、測量・登記関係費用、必要に応じた修繕など
    売却時にまとまった費用が発生します。
  • 賃貸:リフォーム・修繕、設備交換、管理費など
    初期費用が大きくなりやすく、貸し出した後も管理費や修繕費などの継続的な費用がかかります。
  • 解体:解体工事費、廃棄物処分費など
    一度にまとまった費用が必要になります。建物の状態や残置物の量によっては、さらに費用が増えることもあります。

※不動産の仲介手数料は、売買の場合は原則として「売買価格×3%+6万円+消費税」です。なお、売買価格が800万円以下の場合は特例が設けられており、仲介手数料の上限が異なります。

家財整理・処分にかかる費用

実家じまいでは、家具や家電、衣類、食器など、大量の家財を整理・処分する必要があります。家財整理は想像以上に時間や費用がかかることもあるため、実家をどうするのかを決めたうえで計画的に進めることが大切です。主な注意点は以下の通りです。

  • 不用品の量や種類、処分方法によって費用が変わる
    家財が多い実家ではまとまった費用が必要になることがあります。
  • 粗大ごみとして自治体で処分するほか、リサイクルや買取、専門業者への依頼などの方法がある
    自治体の粗大ごみを利用すると費用を抑えやすくなります。まだ使える家具や家電はリサイクル・買取を活用することで、処分費用を減らせる場合もあるでしょう。不用品が大量にある場合は、専門業者への処分依頼も選択肢のひとつです。
  • 仏壇や神棚などは、通常の不用品とは異なる方法で処分する場合がある
    仏壇や神棚などは、寺院や寺社、仏壇店などに相談し、閉眼供養・魂抜きやお祓い、お焚き上げなどを行ってから処分する場合があります。なお、素材や地域の規制などによっては専門業者が廃棄することもあり、供養料に加えて運搬・処分費用が必要になるケースも考えられるため、事前に確認しておくことが大切です。
  • 売却・賃貸・解体のどれを選ぶかによって、必要となる家財整理の範囲も変わる
    選択肢によって必要な家財整理の範囲が異なるため、処分する物の量が増えれば、その分だけ整理費用も大きくなります。

状況に応じて確認しておきたい税金・費用

実家じまいでは状況によって発生する税金や費用が変わります。実家じまいの方針を決める段階から、「それぞれのパターンでどのような税金や費用が発生する可能性があるのか」を確認しておきましょう。特に注意したい税金・費用について以下にまとめました。

  • 固定資産税・都市計画税(賃貸・解体)
    実家を所有している間は、毎年固定資産税や都市計画税が発生します。特に解体して住宅用地の特例が外れると、土地にかかる固定資産税の負担が大きく増える場合があるため注意が必要です。
    (参考)固定資産税の標準税率1.4%、都市計画税の制限税率0.3%
  • 売却時の譲渡所得にかかる税金(売却)
    実家を売却して利益が出た場合、譲渡所得に対して所得税や住民税がかかる可能性があります。所有期間によって税率が変わるため、売却価格だけでなく、税金を差し引いた後の手取り額も確認しておきましょう。
    (参考)長期譲渡所得の税率20.315%、短期譲渡所得の税率39.63%
    ※復興特別所得税の期間:2037年まで(2026年現在)
  • 空き家特例(相続した実家の売却)
    相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。ただし、適用には相続から売却までの期限、建物の築年数や耐震基準、相続後の利用状況など、複数の条件があります。
    (参考)譲渡所得から最高3,000万円を控除。相続人が3人以上の場合は、一定のケースで最高2,000万円
  • 解体によって住宅用地の特例が外れる可能性(解体)
    実家を解体した後、すぐに売却できない場合、翌年以降は住宅用地の特例対象外となり、固定資産税の課税標準が最大で6倍になることがあります。

実際の税額はそれぞれのケースにより異なることがあります。具体的な税額については専門家に相談することをおすすめします。

今からできる実家じまい対策

実家整理で思い出の品を見る男性

実家じまい対策のポイント

実家じまいには、さまざまな選択肢があります。それぞれに費用や手続き、税金、管理の負担があるため、家族の状況に合った方法を早めに検討しておきましょう。今からできる実家じまい対策をまとめました。

家族で実家の今後について話し合う

実家じまいを進める前に、将来的にどうしたいのか、親子双方の希望を確認することが大切です。

どうなったら「実家じまい」を検討するのか、その場合どの選択肢が現実的かを含め、方向性を共有しておきましょう。今後について早めに話し合っておくことで、いざというときに家族が迷いながら判断する負担を減らせます。

実家の書類・貴重品・不動産情報を確認する

実家じまいやその後の相続に備え、まずは「どこに何の書類があるのか」を把握しておきましょう。お金や権利に関わる書類は、親だけが保管場所を知っているケースも少なくありません。

  • 通帳、キャッシュカード、印鑑、保険証券、貴金属など
  • 登記済権利証、登記識別情報など、不動産の権利に関する書類
  • 不動産の売買契約書、固定資産税の納付書、登記事項証明書など

親が元気なうちに整理し、共有しておくことで、いざというときに「書類が見つからない」「誰が持っているのかわからない」といった混乱を防げます。

なお、かつて権利書と呼ばれていた「登記済権利証」は2005年の登記識別情報制度の導入に伴い順次切り替えられ、現在は発行されていません。すでに発行された登記済権利証も使用可能ですが、現在は不動産の権利に関する登記が完了すると、原則として登記識別情報が発行されます。

実家の名義を確認し、必要なら相続登記を進める

実家の売却・賃貸・解体を進めるには、登記上の所有者が誰なのかを確認することが不可欠です。不動産の名義は、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得することで確認できます。

親が所有者だと思っていても、登記上は祖父母の名義のまま、あるいは兄弟の名義が入っているといったケースもあります。その場合は、将来相続が起こったときにも、相続人の確認や遺産分割協議に時間がかかりかねません。早めに登記の状況を確認して、必要に応じて相続登記の手続きをしておきましょう。

実家じまいにかかる費用を概算で見積もる

実家じまいでは、売却・賃貸・解体の各ケースでさまざまな出費が発生します。処分方法を比較する判断材料として、選択肢を決める前に、それぞれにどの程度の費用がかかるのかを把握し、資金の見通しを立てておくことが重要です。

また、その費用を誰が負担し、どこから捻出するのかまで考えておく必要もあります。金額だけでなく資金の調達方法も含めて検討し、家族にとって現実的に進められる方法を選ぶことが大切です。

遠方に住んでいる場合は、役割分担と
外部サービスの利用を検討する

子世代が実家を離れて遠方に住んでいる場合、仕事や家庭の事情などから、実家じまいのために何度も現地へ足を運ぶことが難しいことがあります。実家じまいのためにかかる手間や費用が大きくなる場合は、外部サービスの利用を検討するのも一つの手です。

業者によってサービス内容や料金は異なるため、依頼する前に作業範囲や費用、追加料金の有無などを確認しましょう。

実家じまいで迷ったら、
早めに専門家へ相談を

実家じまいにはさまざまな問題が関係するため、実際の作業に取りかかる前に、まず「実家をどうするのか」という方向性を整理しておくことが重要です。

「親が高齢になってから考えればよい」「相続が発生してから実家じまいを始めればよい」と考えていると、いざそのときになって判断することが一気に増え、負担が大きくなりやすくなります。一方、早い段階で家族での意向を決め、専門家に相談しておけば、それぞれの選択肢を十分に比較する余裕が生まれるでしょう。

現在の状況を整理し、「現状はどうなっているのか」「どのくらい費用がかかりそうなのか」「いつまでに何をすればよいのか」といったことを確認するだけでも、今後の準備を進めるきっかけになります。

「将来的に実家じまいを考えている」「何から準備すればよいかわからない」「誰に相談すればよいか知りたい」など、実家じまいのご相談は「J:COM相続そうだん・コンシェルジュ」へご連絡ください。J:COM相続そうだんでは丁寧にお話を伺い、お悩みに合った専門家や事業者をご紹介いたします。まずは無料のオンライン相談をお気軽にご利用ください。

本記事は掲載日時点の法令・制度に基づいて作成しています。法改正等により内容が変更されている場合があります。正確な情報や具体的な手続きについては、最新の法令をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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